固定資産評価コラム
固定資産評価における適正な時価
固定資産の価格は、適正な時価とされていますが、この適正な時価とはどのようなものでしょうか。
最高裁判所の判例において、適正な時価とは正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解されています。(最高裁判所 平成15年6月26日)
東京高等裁判所で、当該不動産が当該年度において標準的にあげうる収益を基準に算定される収益還元価格が適正な時価とする判例があります。(東京高等裁判所 平成14年10月29日)
そうすると、収益価格も認められそうな気がしますが、そうとも言えないのです。
最高裁判所の判例において、収益還元価格を適正な時価とした上記東京高等裁判所の判決の上告審で最高裁判所は、「適正な時価を、その年度において土地から得ることのできる収益を基準に資本還元して導き出される当該土地の価格をいうものと解すべき根拠はない」として、収益還元価格によることを否定しました。(最高裁判所 平成18年7月7日)
固定資産の実地調査
法408条は、「市町村長は,固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも1回実地に調査させなければならない」と定めています。
すなわち、固定資産税は、毎年1月1日における固定資産の現況によって評価された価格に基づいて課税されるものであるから、固定資産の状況を少なくとも年に1回は実地調査しなければならないとされています。しかし、市町村の職員は、そのような時間は無いので、実際は固定資産台帳登録時の現況確認以外は実施されていません。
なお、固定資産の評価が、この実地調査に基づかないで行われた場合であっても、単に実地調査に基づかないで行った評価であるという理由で無効となるものではないと解されています。
固定資産の価格等の修正に関する道府県知事の勧告
第419条
道府県知事は、市町村における固定資産の価格の決定が第388条第1項の固定資産評価基準によって行なわれていないと認める場合においては、当該市町村の長に対し、固定資産課税台帳に登録された価格を修正して登録するように勧告するものとする。
この規定について、複数の県庁などに聞いたことがありますが、ある市町村内の個別の不動産について、市町村が固定資産評価基準によって行なわれていない場合において、納税者がお願いすることにより、道府県知事が市町村に勧告することはないようです。
価格の修正に関する道府県知事の勧告
1.概要調書の送付
市町村長は、固定資産の価格等を決定した場合又は総務大臣指定資産の価格等を登録した場合には、総務省令の定めるところによって、その結果の概要調書を作成し、毎年4月中に道府県知事に送付しなければならない。
2.道府県知事の修正勧告
(1)勧告
道府県知事は、市町村における固定資産の価格の決定が固定資産評価基準及び修正基準によって行われていないと認める場合には、当該市町村の長に対し、固定資産課税台帳に登録された価格等を修正して登録するように勧告するものとする。
(2)市町村長の措置
①修正する必要がある場合
(イ)価格等の修正、登録
道府県知事の勧告を受けた市町村長は、固定資産の価格等を修正する必要がある場合には、遅滞なく、その価格等を修正して登録しなければならない。
(ロ)公示
市町村長は、(イ)の場合には、直ちに、その旨を公示しなければならない。
(ハ)縦覧
[イ]縦覧帳簿の作成
市町村長は、(イ)によって土地又は家屋の価格等を修正して登録した場合には、直ちに、縦覧帳簿を作成しなければならない。
[ロ]縦覧
市町村長は、[イ]によって縦覧帳簿を作成した場合には、その作成の日から20日以上の期間、その指定する場所において、土地価格等縦覧帳簿若しくはその写しを当該市町村内に所在する土地に対して課する固定資産税の納税者の縦覧に供し、又は家屋価格等縦覧帳簿若しくはその写しを当該市町村内に所在する家屋に対して課する固定資産税の納税者の縦覧に供しなければならない。
この場合、市町村長は、縦覧の場所及び期間を、あらかじめ公示しなければならない。
(ニ)賦課額の更正
市町村長は、(イ)の場合には、固定資産税の賦課後であっても、修正した価格等に基づいて、既に決定した賦課額を更正しなければならない。
(ホ)概要調書の送付
市町村長は、(イ)の場合には、新たに概要調書を作成して、勧告を受けた日から40日以内に、道府県知事に送付しなければならない。
②修正する必要がない場合
道府県知事の勧告を受けた市町村長は、固定資産の価格等を修正する必要がない場合には、その勧告を受けた日から20日以内に、その旨を道府県知事に報告しなければならない。
(3)総務大臣に対する概要調書の送付
道府県知事は、すべての概要調書又は市町村長の報告に基づいて、かつ、すべての概要調書の送付及び市町村長の報告を受けた後、1月以内に、道府県内の固定資産の価格等の概要調書を作成して、総務大臣に送付しなければならない。
価格の修正に関する総務大臣の指示
(1)指示
総務大臣は、市町村における固定資産の価格の決定が固定資産評価基準及び修正基準によって行われていないと認める場合には、道府県知事に対し、当該市町村の長に修正勧告をするように指示するものとする。
(2)道府県知事の措置報告
総務大臣の指示を受けた道府県知事は、当該指示を受けた日から30日以内に、当該指示に基づいてした措置について総務大臣に報告しなければならない。